別れ

2021年12月30日

~救いの証 2~
成長すると共に私は信仰の深い母とは別の道に進んでいた。そのうち母が祈ってくれているので我が家は安泰とさえ思うようになりました。

一家に一人祈る者がいればすべて良しとはいったいどこから出てきた理論かわかりませんが当時の私はそれが正論だと信じていました。時が過ぎ母の店も人任せにできるようになったころ母は度々渡米していました。

ロスアンゼルスには母の妹つまり私の叔母が住んでいてその訪問もありましたが後に母から聞く話ではアメリカで日本料理店を開きたいと思っていたとの事。当時まだ数えるほどしか和食店がなかったことを考えると肝っ玉母さんにもほどがあります。

しかし神様は母にそれとは違う道を開いて下さり母は再婚そして生涯を共にした良き伴侶との出会いがあり米国で暮らす事になり私と祖母も移住する事となりました。

私は母の再婚を心から喜びまた若かったせいか友達、親戚との別れや生まれ育った土地を離れることに何の淋しい感覚もなくただただアメリカってどんなところなんだろう?と地図を広げてはため息をつく毎日でした。

思えば私の人生の要所要所で神様はそのみ手を私に差し出して下さりその都度私は横を向いて通り過ぎていました。当時私が通っていた学校には生徒の憧れの先生がいて私もその女教師,美子先生を尊敬し大好きでした。

その美子先生が間もなく日本を離れようとしている私ともう一人仲の良かった級友を先生のご自宅に昼食を作り招いて下さいました。心のこもったおいしいお食事をした後、お部屋の中をふと見まわすと本棚に聖書が立てかけてあるのを見つけ“先生、聖書読むの?”“教会行ってるの?”“クリスチャンなの?” と矢継ぎ早に聞く私に先生は黙って頷かれました。

初めて知った事でした。私が“聖書は持ってるけど一度も読んだ事ない”と言うと先生は“貴女の手元に聖書がある限り貴女はきっといつかそのページを開く事があると思いますよ”と言って私の手をとって“貴女がアメリカに行っても世界中のどこへ行っても神様にずっと守られ新しい道が開かれますよ。何も恐れずお任せしなさい”と祈って下さいました。

私は先生が私のために祈ってくれた。そのことでわけもわからず涙が止まらず泣き続けました。別れの時ちぎれるほど駅で手を振って送ってくれた先生はそれから数年後教会のご奉仕をされるため学園を退職されたと風の便りで知りました。

先生に祈って頂いたその夜、私は引っ越し荷物の中に聖書を大切にしまい込みました。そしてそれから1週間後夢見る夢子さんの私と祖母は日本を旅立ちました。

14歳の夏の事でした。

西原ジュリー



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