「栄の主イエスの」 賛美歌 142 “When I Survey the Wondrous Cross”

2021年12月30日


When I Survey The Wondrous Cross – Fernando Ortega

「彼らはイエスを受け取った。そして、イエスはご自分で十字架を負って『どくろの地』という場所に出て行かれた。彼らはそこでイエスを十字架につけた。イエスと一緒に、他の二人の者をそれぞれ両側に、イエスを真中にしてであった」 ヨハネ 19:17、18

真に感動的なこの賛美歌が生み出されたのは1707年、聖餐式の準備中のこと。そして同年に出版された珠玉の「聖歌・宗教歌」の中で発表されました。原語での曲名は「奇跡なる十字架を思う時」となっていますが、元々は「キリストの十字架、世界を磔刑にかけること」でした。

その歌詞には、十字架上のキリストの死にある驚くべき愛に対する作者アイザック・ワッツ個人の大きな感謝が綴られています。当時の会衆賛美は重々しい調子で詩篇を繰り返すものでしたから、個人の思いを綴ったこの歌詞は「霊ではなく人間が書いた」ものとして大論争となりました。

死にゆく救い主の姿を鮮烈かつ印象的に紡ぎだすその歌詞は当時としては稀有であり、18世紀のクリスチャンをより深い礼拝と賛美の経験に誘ったに違いありません。神学者のマシュー・アーノルドが「英語で書かれた賛美の中で最も素晴らしい」と呼んでいることも注目すべき点でしょう。

5歳でラテン語、9歳でギリシャ語を学ぶなど神童だったワッツは、成長と共に、詩篇を復唱するだけの賛美を行う英教会のスタイルに違和感を覚えるようになり「神への賛美を歌うことは天に最も近づく礼拝の一部であるが、私たちの賛美はこの世界で最悪のパフォーマンスである」という言葉を残しています。生涯を通して600を超える賛美歌を残したワッツは、今日「イギリス聖歌制作の父」として知られています。

峯岸麻子 

マタイ26:28、ルカ7:47、ローマ5:6-11、ガラテヤ6:14参照                            
Taken from [Amazing Grace] ©Copyright
September 22, 2017, Kenneth Osbeck,
Published by Kregel Publications, Grand Rapids, MI 
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