「ここも神の御国なれば」 賛美歌90  “This is My Father’s World”

「主は正義と公正を愛される。地は主の恵みに満ちている」 詩篇33:5

人間の浅ましさや醜さ、暴力や悲劇を日々突きつけられる現代社会において、それでも私たちは、自然の美しさを享受し、それを喜びます。

夕陽の輝き、そびえたつ壮大な山々、鳥のさえずりや波の音、薔薇や百合の花の匂いや刈りたての芝の匂いに触れた時に感じる、弾むような思いを否定できる人などいるでしょうか?

この賛美歌の美しい歌詞の中に、作者のモルトビー・バブコック博士が抱いた自然に対する深い敬意が見て取れます。当時の長老派教会の中でも非常に素晴らしい牧師の一人として多くの人に認められていた博士でしたが、それだけではなく、優れた運動神経の持ち主でもありました。あらゆるアウトドアを楽しむスポーツマンでもあり、特に早朝の散歩を大事にしていたと言います。

そして散歩に出かける時にはいつも「神の御国を見てくる」と言っていたそうです。また、オルガン、ピアノ、バイオリンの演奏にも長けていた博士が、自然とは「天地、御歌を歌いかわし」ている場所と考えたのも当然のことでしょう。

この賛美歌は、自然に対する賛辞で溢れています。しかしそれだけではなく、そこには尽きることのない神の御力と、いずれ訪れるキリストの支配への確信(「天地、遂にはひとつと成らん」)が、勝ち名乗りのごとく力強く宣言されているのです。

この賛美歌のように、神の御国の美しさについて神を心から称えるとき、私たちは、人間の欲や不注意のせいで失われる自然に関心をもたずにはいられなくなります。

自然が「神の御国」であること、そして人間はその御国を正しく管理するというより大きな責任を背負っている存在であるという、自然に対する新たな理解を持つことこそ、環境問題への真の答えと言えるでしょう。

そしてクリスチャンである私たちは、このような理解と責任に基づいて行動する人間の模範とならねばならないのです。

峯岸麻子

詩篇8、24:1-2、145:1-13、イザヤ45:18、Iコリ15:25-26参照
Taken from [Amazing Grace] ©Copyright
September 22, 2017, Kenneth Osbeck,
Published by Kregel Publications, Grand Rapids, MI
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