ベツレヘム | イスラエルの風

2021年12月30日

正面の小さなり入り口をくぐった。薄暗い。ランプの薄明かりで見ると、聖誕教会の中は人で溢れていた。円柱が立ち並んでいる。長蛇の列をつくっているところがあった。イエスの生れた地下洞窟を見学する列だという。ルカの福音書には「飼葉おけの中に」とあるので馬小屋で生れたのでしょう。洞窟ではなかったはずと訝りながら私たちも列の後尾についた。一向に前に進まない。好奇心の人一倍強い連れのあっちゃんが、いつの間にか列から離れたと思っていると、しばらくして帰ってきた。

「見たよ、見たわよ。祭壇の横から入り、階段を下りるとあったのよ。星のようなマークがあってさ、あそこだわ! この手で触ったの、イエスさまの生まれたとこ」

興奮して話すあっちゃんの言葉を最後まで聞かず私は「どこよ、どこ、どこ」と、駆け出していた。

祭壇横を覗く。警備の人がいる。

「日本から来ました。今夜の飛行機で帰るから、ぜひに見せてください」

私は正攻法で頼んでみたが、英語が通じたのか、通じないのか追っ払われてしまった。スキを狙ったが、ガードは固い。しかたなく引き返して列に並ぶ。遅々として進まない。気がつくと、ガイドのアビィの姿がない。真美子師に尋ねると、

「あんなもの見てどうするのかと、どこかに行ってしまったのよ。コーヒーでも飲みながら待ってるんじゃないかしら」

と、言う。

「アビィの云うことにも一理あるのよ。イエス生誕の地をこの教会の地下洞窟だと決めたのは、ローマ皇帝コンスタンイィヌスの母ヘレナで、AD325年に教会を建てたというから、いい加減だと思う気持も理解できないことはないの」

真美子師の話を聞きながら、私は考えた。場所にこだわることは偶像崇拝になりはしないか。再びこの地に訪れないだろう悔しさを、私は、ケチをつけることで納得しょうとしたのである。とである。
             
森田のりえ


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